今から15年ほど前、読書好きで、音読(おんどく)も好きだった私は、横浜市泉区に生まれた朗読ボランティアの会に参加しました。
その1年後、市立図書館の朗読者募集に、こわいもの知らずで応募。
運よくテストに合格し、蔵書テープの製作と対面朗読を担当することになりました。図書館での講習も受けたのですが、「音訳」は思っていたよりもずっと難しく、たちまち困惑することとなりました。
そんな時、経験豊かで指導力のある先生と、素晴らしい先輩達に出会い、音訳の勉強会に加えていただくことができたのです。
そして、そのメンバーを中心として生まれた音訳雑誌振興協会で、週刊誌 「アエラ」の創刊号からの読み手の一員となりました。
音訳の勉強会、仕事としての「アエラ」の音訳、それに市立図書館での音訳。
この3つを続けながら、ふと気がついてみれば、もう十数年、音訳をしていました。
まず、音訳の勉強会では、図表や写真などの説明の仕方、漢字の説明、校正の仕方やポイントなど、音訳の基礎となること、まさに音訳のイロハを学びました。
今でも毎回、新しい発見があり、勉強会での2時間は、緊張感のある、密度の濃い時間となっています。
次に、「アエラ」の音訳では、音訳者同志が二人一組となり、校正をしあいます。
この「校正」という作業もたいへん勉強になることは言うまでもありません。
人の音訳を聞くことで、なるほどそんな説明の仕方があったのか、この読み方がいいな、などと感心することもよくあります。
音訳サービス・Jの新人音訳者は 「アエラ」からスタートしますが、自分の経験に照らし合わせても、これはとてもいいことだと思っています。
特に、「アエラ」の校正での良い点は、相手と顔を合わせ、話し合いながら校正しあえることです。
紙の校正表のやりとりでは、間違いではないけれど気になったところなど、ちょっとしたニュアンスを伝えることがなかなか難しいものです。
それが、相手が目の前にいることで、この音訳について自分はどう感じ、どう直した方がいいと思っているのか、相手はどう考えてそうしたのかなど、コミュニケーションが図れ、話し合うことによって、よりよい方法がみつかることがあるのです。
また、本来、校正する時は、まず墨字を見ずに「音」だけを聞くことを心がけ、それから墨字と対照して校正すれば、聞くだけではわからない点、見逃してしまいがちな点を発見でき、自分の音訳にもいかすことができます。
最後に、図書館でのテープ製作ですが、これは、音訳するジャンルが、歴史や古典、自然科学、スポーツ、伝記、実用書など多種多様であることが特徴です。自分では知識を全く持ち合わせていないことも多いので、とにかく下調べがたいへんです。
図書館にある、あらゆる辞典と参考文献を駆使して調べ上げ、それでもわからない時は、図書館員に調査依頼を出します。
こうして鍛えられたおかげで、様々な「調べる術(すべ)」を、少しずつ身につけることができました。
今あらためて振り返ってみて、「勉強会」と「アエラ」と「図書館」、この三つが、私を音訳者に育て、助けてくれたからこそ、今日まで10年あまりも続けてこられたのだと、つくづく感じます。
それにしても、視覚情報を読み取り、音声にして伝えることの何と難しいことか!!
新しい一冊を受け取ると、いつも「この本こそ」と思って取りかかり、ベストを尽くしているのですが、目で読むことを前提にして書かれた文章を、聞いてわかるテープに作ることは至難の技です。
それでも、下読み、下調べを終えて録音することは、他の雑事をすべて忘れ、集中した時間を持てることです。
人に聞いて頂けるという喜びを味わえ、又、常に体調を整えておかなければなりませんので、私の健康管理にもなっています。
幅広い分野を読みこなすための知識を身につけようと始めた歴史や漢文の勉強会では、仲間と一緒に、遺跡や博物館を訪ねるという楽しみもついてきました。
自分では手に取るチャンスのない本を音訳することで、読書の世界を広げることもできました。
音訳から得ることはたくさんあるのです。
これからもできる限り力をつけて、ライフワークとしてこの仕事を続けていきたいと思うこの頃です。
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